記憶の箱が開くとき

都市の暮らしから
伊豆高原に移り住んで一番の愉しみは
複雑に入り組んだ別荘地の道を気ままに散歩することではないでしょうか。

ほっこりとした土の感触。
草むらのムッとした青臭さ。
つんと鼻の奥をくすぐる花々の芳香。
何処からか聞こえてくる山鳩のくぐもった声。
刻々と変わる光と影。雲の形。そして風。

どれも懐かしいような、ほっとするような、
胸の奥の奥がきゅんと甘酸っぱくなる感覚です。
そして、触れた瞬間、無機質な生活ですっかり鈍化した五感が
びくんと起きあがります。

あの頃と同じ匂い。同じ風景。同じ風。
ここに、佇んでいるのはいったい何時の自分?
目を瞑れば タイムスリップするみたいに、
記憶の箱がカッチと音を立てて開きます。

こんな素敵な5月の日は散歩の途中で、
草むらに潜り込んで虫を探している
7才の自分に逢えるかもしれませんね。

 

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