Vol.02

天城高原

伊豆スカイラインの終点・天城高原は、遠笠山・箒山・万二郎岳・万三郎岳・矢筈山など天城連山とよばれる山々に今も手つかずの自然が息づく緑の楽園です。こんこんと湧き出る温泉、清らかな清流、澄んだ空気、深い森…。現在の伊豆は、天城の山々からの恵みで成り立っていると言っても過言ではありません。今回はこの天城の魅力をお伝えしたくて、全長約20㎞、標準歩程時間6時間20分の天城縦走コースに挑戦。伊東市側の天城高原ゴルフ場の登山口から河津町まで天城の山々を、尾根伝いに歩いてみました。




天城の森の中を歩く


伊豆の屋根といえる天城の山々を尾根伝いに歩くコースは、急勾配のアップダウンがあり、けもの道のような不安定な足元も多く、かなりの健脚コースでしたが、「ヒメシャラ」や「ブナ」の原生林、「アセビ」のトンネル、「天城シャクナゲ」の群生、モリアオガエルの生息地「八丁池」など、登ってみて初めて見ることの出来る感激の美しさです。真夏というのに一歩天城の森に踏み込んだとたん、太陽の陽射しは深い森に遮られて、神秘的な緑色の空間が続きます。周辺には目を疑う直径1mもあろうかという「ヒメシャラ」や「アセビ」の大木がいたるところに生い茂っています。樹齢何十年くらいでしょうか。あまりのパワーに思わず木に触れてみたくなります。私たちの生まれる以前から、そしてこれからもずっと悠然とそこに生き続けていく美しい大樹たち。山はその存在そのものが哲学ですね。



万二郎岳に到達

最初の目的地・万二郎岳は標高1320m。頂上近くにある切り立った岩場によじ登ると、遙か彼方に駿河湾に面した沼津の町を望むことが出来ます。「万二郎岳」と書かれた看板に〈第一ステージクリア〉の満足感がひろがります。




万三郎岳に挑む

次はいよいよ伊豆最高峰・万三郎岳へ。途中、馬の背と呼ばれる稜線には、富士山全景を望むビューポイントや、花が咲く頃はどんなに綺麗かと想像させるアセビのトンネル道があり、山の魅力を満喫できます。余談ですがアセビは漢字で「馬酔木」と書きます。知らなければなかなか読めませんよね。でも、その名の由来を聞けば忘れることがありません。アセビの茎葉は有毒で、牛馬が葉を食すとたちまち痺れてしまうそうです。それで、アシシビレがアシビ、アセビとなり、〈馬の酔う木〉と書いてアセビ=「馬酔木」と書くのだそうです。


万三郎岳は標高1406m。頂上に一等三角点を持ち、日本百名山の一峰にあげられている、伊豆で一番高い山です。そのいただきは豊かに樹木に覆われていて、頂上には倒木で作られたベンチと木陰が、登り人を優しく迎えてくれます。随筆「日本百名山」の作者・深田久弥は、選定の基準に高さだけでなく、その山の歴史や品格、美しさを重要視したと記しています。




圧倒的な原生林の存在感

さあ、ここからは八丁池まで片瀬峠、小岳、戸塚峠、白田峠と約10㎞に及ぶ稜線を歩きます。

途中にはブナの原生林が続きます。中には直径5~6mもある巨木や〈へびブナ〉と呼ばれる奇妙にカーブした造形のもの、何本もの木が合体して一本になっているタブの木など、なかなか見ることの出来ない珍しい木々を観察することができます。

疲れもピークを迎える頃、眼前に透き通る湖面が現れます。




自然の源、八丁池

コースの最終地点・八丁池に到着です。八丁池は何十万年もの昔、天城山が活火山だった頃の火口に水が溜まって出来た火口湖です。標高1125m、周囲約870m、周囲が8丁あることからその名がついているそうです。「歩く」という手段以外では訪れることの出来ない自然のままの湖です。その静けさと鏡のように静まりかえった湖面は、訪れた人を荘厳な気持ちにさせてしまうほどです。




天城高原ゴルフ場の登山口をスタートして、ほぼ標準どおり約7時間が経ちました。 灯台下暗しで、身近にこんなにも素晴らしい自然があることを今回の縦走登山で改めて感じることが出来ました。これからもずっと、天城の自然がこのままでありますように。




「天城高原」

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インフォメーション

伊豆というと海というイメージが強いかもしれませんが、海と同じくらい魅力の深い「山」の神秘性と自然の循環システムが、伊豆の地をいっそう豊かなものにしています。天城高原は山深く、雨が降れば夏でも霧が立ち込め、野生の鹿の姿も見られ、そこここに清らかな流れが見られます。山へ足を運び、大自然の懐に抱かれ、静かに瞑想する時間が日々の疲れを癒し、本来の生きる力を取り戻してくれます。


●取材・撮影:メープルハウジング ●画像、本文などの無断転用は法律により禁止されています。

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